「室賀温泉」・・今までも、国道143号を通るたびに、国道沿いにその看板を見かけていたが、至近に、長野を代表する名湯、別所温泉や田沢・沓掛温泉という大物が控えるこのエリアにおいて、なんとも頼りない看板に足が向かなかった。
また、そんな立地にあって、自ずと経営的にも苦戦しているのではないかという余計な心配もしていた。
これがR143の看板(Googleストリートビューから) ものは試しと、本日は向かう。
畑の中を、県道273号を、かなりの距離登り進んでいくと、看板のたよりなさを払拭する、大きな公園のような中に大きな建物が見えてきて、周りには多くの車が駐車されているようすに驚きを感じた。
そのはず、ここは天下の上田市が運営している公の施設だったのだ。
正式名称「農林漁業体験実習館」という農林水産省系補助金で整備されたのだろう施設だった。
玄関には26周年と表示されていた。1997(平成9)のオープン。
東御市の「湯楽里館」も同じく農林漁業体験実習館、小諸市の「あぐりの湯こもろ」は農村資源活用交流施設だ。
この地域には、農林水産省系補助金整備タイプの温泉施設が並ぶんだな。ガットウルグアイラウンドとかって耳にした時期があった。天下の上田市にもこれに乗ったものがあったのを、恥ずかしながら初めて知った。
「ささらの湯」という名称は、この地にも3頭立ての獅子舞が伝わり、その際に子供たちによる「ささら舞」という踊りで迎える伝統行事、これにちなむのだろう。
施設は、新しく今風の印象を受けるからリニューアルを重ねているのだろうと思ったが、地元出身の建築デザイナー北川原温氏による作品であることが理由のようだ。
真に設計のよいものは古びない。建設時にそこにコストを惜しんではいけない、と教訓にしたい。
それはさておき、1F玄関を入ると受付で、その前にはちょっとした産物直売所と、奥に座敷となってお茶も飲める休憩室があった。
料金500円。このエリア相場。
正面と思われる1Fから入り、2Fにある浴場までギャラリーとなっている長い廊下を歩いて到着。
実は、裏側の駐車場に車を回せば2F浴場に直結した別の入口があるのだった。
時間のせいか、お客も混雑気味で、施設も大きい。
湯楽里館や、あぐりの湯こもろの例もあり(失礼)正直、泉質には期待していなかったのが正直なところ。
いやしかし、泉質にびっくりした。
はいるなりツルスベに包まれる。いい湯じゃないか!
どの投入口にも「源泉」と掲げられ、やわらかなゆで卵臭の湯がぜいたくに投入される。
近いだけあって、やはり別所の湯と似ている。しかし、ツルスベの濃厚さは、勝るとも劣らない。
成分的には、単純硫黄泉で、総量0.38/kgと薄いのだけれども、成分の濃さだけでわからないことがあるものだ。
数多の施設で、分析書詐欺とでも言いたいほど泉質にがっかりすることがほとんどの昨今、うれしい誤算。
設備面でも立派。
内湯は、岩風呂つくりの長い浴槽が1、露天風呂はなぜか二つあって、奥の浴槽は「きくの湯」といい、寄付金を元に増築されたものとのこと。
投入される源泉もやや熱めだが、浴槽の何か所から加温された湯も加えられこれは循環しているものと想像できる。
浴場には小規模ながらサウナと水風船もしっかりある。
ここは「美肌の湯」をウリにしているようであるが、納得できる。
最後まで飲泉用蛇口があることを知らず、「源泉」を掲げる投入口から、美味しくて何度も飲泉してしまったが、実はそれ用が別にあった。
入口近くのかけ湯の脇に蛇口があって、これがそう。
直接新鮮な湯を引く、持ち帰りはしないなど、飲泉のための条件をクリアするものだというので、こちらで利用を。
詳しい分析書は、脱衣所内に掲示されていた。混雑していたので、今回、撮影はやめておいた。
成分量としては、総量0.38グラムのアルカリ性単純硫黄泉。別所の湯も同じ泉質のはず。ただし、こちらの方がアルカリが強い。
代わりに簡易な掲示から。
源泉温度50.7度 またPH9.36とかなりアルカリ度は高い。
内湯、外湯ともに確認したが、内湯の投入口付近が最も濃厚な泉質が感じられた。
ほかに、掲示してあったマスコミ等にとりあげられたものらから。
これだけ大きな施設で湯のポテンシャルも素晴らしいと感じられる施設は、そうそうない。(新しくなった愛染閣あいそめの湯には、まだ行ったことがないが汗)
泉質にびっくりだったが、今回ビギナーズラック、雨の少ない季節、とくによい時期にあたった可能性はある。
それにしても、これは、リピート必至のオシ施設発見となった。
■案内
上田市農林漁業体験実習館 室賀温泉ささらの湯
長野県上田市上室賀1232-1
TEL 0268-31-1126
営業 朝風呂:午前5時~午前8時(最終受付 午前7時20分)
昼・夜風呂:午前10時~午後9時(最終受付 午後8時20分)
休館 毎月第2・第4木曜日
料金 朝風呂300円 昼夜500円
公式ページ